会社設立の際は平成18年税制改正に注意!
<会社設立の際は平成18年税制改正に注意!>
平成18年度も多くの税制改正がありました。
その中で特に重要なのが 「役員給与の給与所得控除相当額の損金不算入」です。
国民の大半がサラリーマンであるせいか新聞やテレビの報道では、あまりやらなかったようですが、中小企業には非常に影響のある改正です。
個人事業が法人成り(事業を会社組織にすること)する大きなメリットの一つが、「節税」であることはいうまでもありません。
なぜ法人化すると節税になるかというと、
個人事業者であれば「実額の経費」しか控除できませんが、会社にして役員報酬をとる方法にすれば、給与は会社の経費にできる上に、役員給与からも「給与所得控除」という一定の必要経費分を控除できるからです。
しかし、今回の改正により、「一定の同族会社の経営者に支払う役員報酬については、給与所得の概算経費分に法人税を課します」ということになります。
個人事業と実態が変わらない会社については、「実額の経費」と「給与所得控除」のダブル控除は認めない、つまり、企業の実態に即した課税を行いますよ、という趣旨です。
今春から新会社法施行により、個人事業からの会社設立ラッシュが見込まれることを見越してこのタイミングで改正を行ったのでしょう。
では、この税制改正で損をするのは一体誰なのでしょうか?
まず、適用の対象となるのは、以下の2つの要件を満たす会社となります。
1.業務主宰役員及び、その同族関係者等で発行済み株式の総数の90%以上を 保有(有限会社の場合は、出資額の90%以上を保有)
2.その業務主宰役員等が、常務に従事する役員の過半数を占める
※業務主宰役員とは、オーナー経営者など、「経営権を行使して職務を執行する中心的な役員」と考えられます。
但し、ラッキー?なことに、例外もあります。
1.業務主宰役員の給与+法人所得)の直前3年内の平均額が800万円以下
2.又は、800万円超3000万円以下で、かつ、この平均額に占める業務主宰役員給与の額の割合が50%以下の場合
には、この税制の適用はありません。
結局、同族会社や小規模会社は大体儲けの半分以上を、オーナー経営者に「役員報酬」として支払っていますので、ほぼ増税となると考えてよいかもしれません。
では、実際どのくらい税額が増えるのでしょうか?
この要件を満たす会社の業務主宰役員が、年1500万円の役員報酬を得ていたとします。
この場合、給与所得控除額が245万円になりますので、中小企業の実効税率を30%とすると、約75万円の法人税等が増加することになります。
適用対象となる会社にとっては、かなり重い税負担増です。
「やってられねえよ!」
という声が聞こえてきそうです。
何か最近大企業は何かと優遇するのに、中小企業いじめ税制改正が多いような気がしますね。
では、オーナーはどんな対策をとればいいのでしょうか?
仮に年俸1500万円のオーナー経営者が、この改正の適用対象法人となれば、増税額は約75万円です。
これはいかにも痛いので、なんとか回避できないものでしょうか?
答えは適用要件を見ればわかりますね。
<増税回避策その1>身内以外に株式の一部を渡せ!
同族関係者等以外の人に、株式の10%超を譲渡または贈与すれば、形式的には要件を満たさなくなります。
ただし、株主権を譲り渡すのですから渡す相手は慎重に選び、必要以上に多く渡しすぎないようにしましょう。
節税のために会社が乗っ取られたら元も子もありません。
なお、親類以外であっても、事実上婚姻関係と同様の事情にある者等、一定の人への譲渡については、同族関係者等への譲渡になるので注意してください。
<増税回避策その2>役員を増やせ!
業務主宰役員等が「常務に従事する役員」の半数以下であればこの規定の適用除外となります。
そこで、従業員の中に経営上重要なポジションにいる人がいれば、その人を役員に登用するのも一つの手です。
この場合には、後々のトラブルとならないよう、必ず役員就任予定者に、取締役の義務や責任について説明し、承諾を得るようにしましょう。
但し、「常務に従事している役員」であることがポイントなので、名目だけの役員を登記しても、意味はありませんのでご注意下さい。
とはいうものの、、、、、
これらの回避策は、税務署も当然「想定の範囲内」でしょう。
そのため、顧問税理士等によく相談し、要件を満たすよう慎重に準備したうえで、増税回避策を練ることが重要ではないでしょうか。